Essay [Concepts under construction]

【連載エッセイ】

概念工事中

長野智夫


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■2001/3/24 【番長】
広告批評2001年3月号に、『ドーブツ番長』というNINTENDO64用のゲームソフトを作っている人のインタビュー記事が載っていた。
松本弦人という人で、本職はデザイナー。その業界では結構有名な人だ。
数年前に『ジャングルパーク』というソフトを作って、その流れでマリーガル発足時に本格的にゲームを作らないかというオファーがあったらしい。
この作品の製作にはすでに3年半が費やされているが、未だ完成していないそうだ。
記事を読んでいて思ったのは、最初の着眼点が、通常ゲームを作るときの方法と違うということだった。
「超ローポリゴンの角張った動物」というビジュアルイメージをとっかかりにして、それをゲームにするという手順でゲームを設計しようとしている。
このやり方は、ゲームをゼロから設計していくときの手順としては、ふつう使われない。
ビジュアルイメージというのは、重要ではあるが、ゲームの核にはなりえないからだ。
誰か指摘する人はいなかったのだろうか。
ゲーム屋の作り方の因習を打破するという意味では、違う作り方を試みるのも良いと思う。が、三年以上かかっても完成していないということは、やはりあまりうまく行かなかったのであろう。
伊藤ガビン氏も深くかかわっている作品でもあり、ぜひ遊んでみたいので、どうにか早く完成することを願っている。

■2001/3/25 【構造】
映画『サトラレ』を見た。
作りがすごくカッチリしていると思った。
たぶん、『サトラレ』という設定から想像できる面白いor感動するシチュエーションのアイデアを列挙して、それを予算内で可能な場面数内で納めるようにプロットを構成するというような作り方をしたんじゃないかなあと考えた。僕ならそうすると思う。
このやり方をすれば、撮って編集する前の脚本の段階で、ある程度面白くなることが見える。
構造的に絶対面白い&感動するような形の物語ができる。
実際、前に座っている人とか、泣いている人多かったし。
でも、この手のネタ重視ものって、通用しない人にはまったく通用しないなあとも思った。
現実の人間の痛みみたいなものが入ってないからだろうか。

■2001/3/27 【ゲームの構造】
ゲームをいくつかやってみると、このゲームとこのゲームは同じだという、システムの相似性のようなものが感じられることがよくある。
これはみんなそうだろうと思う。
これをなんとか、書き表す方法はないだろうか。
たぶん、数学的手法を使って記述できるような気がする。
それで、ゲームの構造の相似性の証明なんかもできるような気がするのだが…。
学生時代にもっと数学をやっておけばよかったと思う。
って、思うんなら今やれよって感じなのだが。

■2001/3/30 【ピクロス=労働?】
マスターマインドも、マインスイーパーも、スコットランドヤードも、潜水艦ゲームも、それに推理小説も、実は同じゲームなのではないか? 同じ構造として書き表せるのではないか。
で、ピクロスもそうかなと思ったのだが、これはよく考えてみると違うような気がする。
というのも、ピクロスはあらかじめその問題を解くための手がかりがすべて与えられている状態で始まるからだ。時系列とか確率的な要素が全くない。一度も失敗せずに自動的に問題を解くアルゴリズムを作ることができる。
だからこれは、どちらかというと、構造的には“ゲーム”ではなく“単なる作業”である。
でも、“ちょっとずつ絵ができてくる”という“感触”が楽しいので、“ゲーム”になっているのだろう。
つまりこのゲームは、パズルよりも『グルーヴ地獄X』の“ボールペン工場”(評論のページを参照)に近いものだと気づいた。

■2001/3/31 【相似律】
構造的に見ると、『スーパーマリオブラザーズ』は、『アトランチスの謎』よりも『ドラクエV』(『ウィザードリィ』でもいいけど)に近い。『パックランド』よりも近いかも知れない。
ゲームは、ゲームであろうとすればするほど、ゲームとして最適(作る上での費用対効果が)であろうとすればするほど、構造において似通っていくように思える。
だとしたら、いくら新しいと思えるゲームをつくっても、結局昔あったものの表面をリフォームしただけなのではないか。


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 日本偽現実工学会会報 [The Bulletin of Japanese Fake Reality Engineering Society]
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