Essay [Concepts under construction]

【連載エッセイ】

概念工事中

長野智夫


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■2002/9/4 【映像の向き】
富野由遥季の『映像の原則』を読む。
舞台の下手が左で上手が右なのは、心臓の位置が左にあるからだという話が書いてあって、そうだったのか!という感じだ。
なので映像の自然な流れというのは、右から左へということになるらしい。
この話だけは最近人から聞いていたのだが、僕はそのときには、文字を読む方向と関連があるのではないかと思っていた。
ゲームの場合、主人公が左にいて、右に進む形式が一般的だ。
これは、我々が議論した結果では、インベーダーからの流れによるものではないかということになった。
『スペースインベーダー』は動きが左右のみのシューティングゲームだ。
自機の動きよりも、弾を撃つタイミングの方に細かい操作が要求される。
なので、利き手の右が発射ボタン、左が操作レバーになったのではないかと考えられる。
で、一度コンパネがこの形式になると、人はこの形式に慣れてしまうし、作る側もそれを踏襲したものの方が作りやすくなる。
で、横方向に進んでいくものを作ろうとしたとき、どっち向きの方が「前に進んでいる」感覚が出るかといったら、体に対して内側方向になる。
つまり、レバーが左にあるので、右向きということになる。
ざっとこういう推論だった。
で、それを映像の原則に当てはめてみると、自分に敵対するもの、強いものが右から現れることになり、これはまあ妥当ではないかと言える。
今考えてみるとこういうことになるが、最初に横スクロールのゲームを作った人は、どっち向きにするか、結構悩んだんじゃないだろうか。

■2002/9/13 【理想書物】
ネタ繰り期間中。
こういうときに本屋に行くと、つい探してしまうのが、「それを読んだだけでムクムクとインスピレーションがわいてきて、たちまち3本くらいの企画が出来てしまうような本」だ。
しかし世の中、そう甘くはない。そんな都合の良いものがあるわけがない(笑)。
と言いつつも、今まで読んだ本の中で比較的それに近そうなものを連想してみると…
・『横井軍平ゲーム館』
・『スペースオペラの書き方』
・『知の編集工学』
・『イメージ生産の技術』
などが挙げられる。
この並びを見てみると、いずれも「方法」に関する書物だと気づく。
で、なおかつ、「インスピレーションがわいて“きそう”な本」であり「すごい企画が作れそうな“気がしてくる”本」でもあるのではないかという気もした(笑)。
つまりは、これらの方法はちゃんと身に付けて、普段からアンテナを張って、常に頭を編集作業の途上においておくことで有効になる本ということで、やはり泥縄はダメだということか(笑)。
とは思いつつも、やっぱりそういう「理想書物」を探してしまうんですよね…。

そういう意味では、大人の『コロコロ』みたいな雑誌があると便利な気がする。
それがどういう物をさしているのかは漠然としているのだけれど。
『日経トレンディ』なんかが、それにわりと近い気がしていて、こういうネタ出しの時期になるといつも買ってしまうのだが、ここから具体的なアイデアが出たことはない。
「ゲームでもこういう内容の広告ってアリじゃないか」とか「銀行のサービスにゲーム性をつけてこうしたら面白いんじゃないか」とか、そういう余計なアイデアは出てきたりするんだけれど…(笑)。

■2002/9/21 【企画と仕様】
ネタ出し期間続行中。
先週は連休3日かけて練っていた案が3日目の夜中の2時ごろに「ダメだこりゃ」となった。
しかし発表の日は翌日だったので、そこから仕方なく井原西鶴モードに切り替え、数を出すことにした。
そうすると、意外と出る。
やはりアイデアの基本は数だなと思った。
そして実は翌々日が締め切りだったことを翌日知り、その日も井原西鶴モード続行。
そうすると、やはり出る。
その中にわりと好評なものがあり、継続検討が決まる。
で、今週はまたその検討作業という感じに。
ここで今さらながら気がついたのは、企画と仕様は違う(笑)ということだった。
なんというか…、「今ごろ気づくなよ!」と思わず自分にツッコミを入れたくなるくらいだ。
最初の3日の検討が実らなかったのは、テーマをいきなり仕様の形にしようとしていたからだったのだ。
企画というのは、もう文章一行で完結するくらいでないといけない。
ボタンを50個使うロボットゲーム!」とか
ピンクのクマがメールをはこぶ!」とか
そういうものだと思う。
もうそれで、判断できるのだ。
それでいけそうだということになった段階で、仕様(といっても企画書に書く程度の)を考えるという手順でないといけないなと、今さらながらに思った今日この頃。


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 日本偽現実工学会会報 [The Bulletin of Japanese Fake Reality Engineering Society]
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