Novel [The Last Spurt Diary]

【小説】

追い込み日記

田村耕三


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1998年7月2日
今日は48時間あったのでよかった。
しかし一日余計にカウントされてしまっているのが残念。
追い込み作業たいして進まず。

1998年7月3日
メタルギア・ソリッド体験版をプレイ。
すごい。カッコよすぎる。
このゲーム、ムービー部分もすべてゲーム中と同じリアルタイムでのポリゴン処理なのだが、めちゃくちゃカッコよくてリアル。モーションブラーまでやっている。リアルなのは効果音のせいもあるだろう。
発売が待ち遠しい。まあその頃には現追い込み作も発売になることだし。
あ!! ということは……ライバル!!(←そんなわけない)

1998年7月4日
はやく追い込み終わらないかなあと、ワクワクしながら待つ今日この頃。
開発進行度77.2%。締め切りは3日後。

1998年7月7日
ゲーム作りとは不思議なもので、つい3日前に77%の完成度だったものが、締め切り当日には91%くらいになってしまうところがすごい。というかまともに全部動き出したのが前日だしな。
これでどうにかデバッグにかけられるか? というところだったのだが、なんとクライアント様はスケジュールの遅れを見込んでサバを読んでいたらしく、デバッグ業者に期日を指定した予約は取っておらず、別に明日からデバッグというわけではないということが判明。そりゃあないぜ鼻毛。

1998年7月14日
みうらじゅんの本『いやげ物』を購入。(←後でよく見たら、直筆サイン入りだった)
現追い込み作の参考にするためだ(←どんなゲームだ)

1998年7月16日
作業はまだ残っているが、取りあえず提出してデバッグが始まった。(←始まってないような気がする)

1998年7月17日
FF[の体験版をプレイ。たるい。なんかもうイッちゃってる。(←FFシリーズはビジュアルや演出を豪華にしつつも、それだけでなく、ゲームシステムが練り込まれているので評価していた。具体的に言うと、演出とインタラクティブの融合などという不可能なテーマを捨て去り、ストーリーを豪華なビジュアルで見せるという部分はオマケあるいはゲームに引き込むための牽引材料として割り切り、戦闘システムを進化させて、そこで遊び込めるようにしていた。しかし、今回はその遊び込みを拒絶するほど戦闘が圧倒的にかったるい。やはり、戦闘のエフェクトは、戦闘の流れを停滞させてしまうほど豪華にしてはいけなかったのだ。こうなると、この路線は先がないことになる。)
これなら充分勝てる。(←違いすぎて比べられないだけ。しかも別に勝ってない)
さいわい、メタルギアとはぶつからなくて済みそうだし。(←機種が違うから全く関係ない)

1998年7月18日
今日はハワイに行こうかと思っていたが、混んでいそうなのでやめて出社。
あと、発売が結構延びそうなので(完成が遅れたからではない)、楽しみにしていた方々には申し訳ない。しかし、体験版はあと数週間の内に出る予定なので、ぜひゲットして欲しい(何をどこでゲットすればいいかは、皆様の判断にお任せします)。

1998年7月19日
現追い込み作のパッケージ・広告展開等に関する先日の打ち合わせの内容を聞いたら、なんか関係者の個人ホームページなどで紹介していいということになったらしい。というか、積極的に草の根で広げて行こうという方針になったそうだ(笑)。確かに作りはインディーズだが、発売はちゃんとした大会社なのに…。
というわけで、ヒミツにする必要がなくなったので、そのうちここの編集室に頼んで、紹介記事を載せてもらうかも知れない。

1998年7月20日
庵野秀明の『帰って来たウルトラマン』を(なぜか)鑑賞。
う〜ん…スゴイ。でも、これでウルトラマンが庵野秀明じゃなかったら、ぜんぜん面白くないのだろう…ホンモノっぽすぎて。

1998年7月22日
個々の要素が面白そうでも、それらをすべて組み合わせたときにどう機能するかというところをもっと考える必要があるということを痛感。いろいろつめこむのはいいけれど、あまり使わない部分がでてきてしまって結局労力対効果が悪くなる。その分もっとメインの方に力を注いでいれば…という事態がわりと新鮮な感じで、ああゲーム作ってるなあ…という実感が湧く今日この頃。

1998年7月23日
昨日からデバッグが始まった(←やはり16日には始まっていなかった)
しかし作業が完了しておらず、見切り発車でヘロヘロ状態。
やはり大作RPGを作るのは予想以上にムズかしい。

1998年7月24日
今日は給料日だ。入社3ヶ月でいきなり給料が50%もアップしたぞ(笑)。ウヘヘッ。

1998年7月25日
秋葉に行ったら、伊集院光と浜村通信がしゃべってた。
現追い込み作がマスターアップしたら(←いつかは不明)、自宅のマシンを2年分くらいパワーアップさせる予定。

1998年7月26日
アインハンダーのCDをゲット!(←今ごろ)
しかし作業中に聞くと眠くなって(←なるな)仕方ないので、最後まで聞けずにいる。
今日からこの日記も新シリーズに突入! ますます目が離せないぞ!

1998年7月27日
現追い込み作の件で取引先との打ち合わせ。
帰りにテクノドライブに挑戦。4回やったが、すべてレベルEかE+。
ムカツクが、結果シートの点取り占いみたいな絵が気に入った。あれでもう少し同じEでもいくつか絵にバリエーションがあれば(描くのはたいして手間ではないと思うし)、もっとコイン2こいれる気になったのに。そこが惜しい。

1998年7月28日
ある問題で社内会議をしていたところ、いつの間にか「ラーメン屋はもうかる」という話になる。ゲーム作りの経済性がどんどん悪くなっているという話から発展し、確実にもうかるものってなんなの? という話になったのだ。生活必需品という案も出たが、いまや米ひとつとってもブランド名や営業努力で売る時代だ。現代のような過剰生産・過剰消費の社会では生活必需品といえども競争が激しく、あらゆるものは嗜好品と化している(これは、ゲーム会社なんて安定しないから低級という攻撃に対する反論として考えてあった説。ま、穴はあるけど)。というわけで、しょせん安定など存在しないという説に落ち着く。ただ、やはりラーメンのようにエスカレートさせなくてもいいようなものの方が、かなり楽ではあると思う。

1998年7月29日
夢のような話シリーズが、なんかスゴイことになっているのでスゴイ。

1998年7月30日
ホームページからダウンロードできる体験版の締め切りが近く、あわただしい。
たぶん盆前までには公開されることになるだろう。

1998年7月31日
今年の社員旅行は『ポケモンスタンプラリー』に決定! ウヘヘッ! ゲットだぜ!
朝日新聞の発表によると、Windows98の販売本数は2日間で25万本らしい。 これは95の4日間で25万本を遥かに上回る数字で、マイクロソフトは売り上げ見込の上方修正を予定しているということだ。う〜む……スゴイ。2日間で『デコトラ伝説』(現在21万本)を超えるとは!!
明日は地元の花火大会(追い込みで行けないが)。川でやるのだが、川のこっちと向こうでは大会の名前が違うということを去年知った。


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 日本偽現実工学会会報 [The Bulletin of Japanese Fake Reality Engineering Society]
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