【概論2】宗教とコンピューターゲーム


ここでは、宗教工学研究室で行われている宗教的偽現実構築技術の研究を、他の偽現実に応用するための考え方について考察する。そこで、宗教とゲームを偽現実という一元的な尺度でまとめ、どのような部分で、どのように関連があるのかを考えてみることにする。まずは、偽現実の性質についての議論から始めよう。

(1)偽現実は多層的に形成される

偽現実は多層的に形成される。それぞれ異なる層の偽現実の要素が結合して一つの偽現実となる。
例えば、「ドラゴンクエスト」という偽現実は、同名のゲームソフト内の世界だけでなく、それをプレイする者の集合と、その集合内でのネットワークという偽現実を含む。ただ、この場合、そこでやり取りされるものは、ゲームをやった記憶の情報のみであり、ドラゴンクエストというゲームの中の世界とそれを取り巻く世界には断絶がある。
しかし、「ポケットモンスター」の場合、それをプレイする者の集合と、その集合内のネットワークにおいて、ポケモンというゲーム内の情報そのものが流通することになり、ゲームの中の世界とそれを取り巻く世界は断絶なく滑らかに結びついている。
「バーコードバトラー」の場合、ゲーム内の世界とそれをプレイする者の集合に加え、社会に広く流通しているバーコードを、ひいては商品そのものをもその世界の中に内包しているのである。

(2)日常のあらゆるものと結合している宗教

以前、人間は、宗教(神)を通してしか、自然に働きかけることができなかった。
災害があれば、神にその沈静を祈り、作物が豊作ならば神に感謝した。だから宗教は古来、自然と人間の世界をつなぐものだったと言える。コンピューターでいうところの、オペレーティング・システムのようなものである。
つまり宗教という偽現実は、現世のあらゆる物や事象を内包していた。

(3)宗教とゲームの類比

(1)と(2)の議論を踏まえ、宗教とゲームを偽現実という一元的な尺度でまとめ、どのような部分で、どのように関連があるのかを考えてみよう。

ゲームが内包しているもの
1.そのゲームの世界
2.そのゲームをプレイする者の世界
3.そのゲームが取り込んでいるものの世界
基本的構図:まず1がある。1はそのシステムの中に3を含むものがある。それに2が引きつけられ、偽現実世界が完成する。

宗教が内包しているもの
1.その宗教の教えや物語の世界
2.その宗教を信仰している者の世界
3.その他、この世のあらゆる事
基本的構図:まず1がある。1はそのシステムの中に3を含む。それに2が引きつけられ、偽現実世界が完成する。

以上の通り、ゲームと宗教は、1,2,3の尺度において、等価なものだと言える。
宗教における、聖書・大聖堂・普遍史・修道院・カバラ・記憶術・結合術・寓意図などは1の存在を支援し、2を拡大するためのものであり、また、1の中に3を取り入れるための方法でもある。
よって、これらについての議論は、ゲームにおいても、1の存在感を増幅させ、2を拡大してゆくための方法、1と3を結び付けるための方法に対応させて読むことが出来る。


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