RACTOR

「RACTOR」は1986年に米マインドスケープ社から発売された、人工知能会話プログラムである。このソフトは、プレイヤーが人工知能と自然言語(英語)で会話をすることができるという、まことに画期的な作品であった。

完璧な文法と膨大だがクセのあるデータベースを駆使して繰り出される独特の話術は、シュールで、狂気に満ちていて、しかも意味がないのが特徴。プレイヤーからの質問に答えてゆくという形で会話が進行するが、プレイヤーの言葉に対し、その10倍以上の言葉で対応し、さらに逆に質問を返したり、ジョークを言ってひとりで笑ったり、即興で詩を作って披露してくれたりもする。ラクターが作った詩は本にまとめられて実際に出版された。
コンピューターの著作による世界初の詩集である。タイトルは「THE POLICEMAN'S BEARD IS HALF CONSTRUCTED」 (警官のヒゲは半分建設された)。

プレイヤーの言葉を理解し、データベースを駆使して会話や詩やジョークを作り出すという、インタラクティブでダイナミックな編集機能と強烈な個性を持つ擬似人格性は、ノンリニア自動編集技術や偽ヒューマンインターフェイス技術の一つとして再評価すべきであろう。


【前に戻る】