弟切草

「弟切草」は1992年に株式会社チュンソフトから発売されたスーパーファミコン用ゲームソフトである(写真は後に発売されたプレイステーション版)。
基本的には、画面に表示される文章を読み進めてゆき、ところどころに現れる選択肢を選ぶことで、その後の物語の展開を変化させて楽しむという内容のゲームである。同社はこれを「サウンドノベル」と名付けた。
この作品以降、他社からも類似の商品群が次々と発売され、すでに一つのスタンダードなジャンルとして確立した感がある。

画面には、文章の他にも挿し絵が表示され、要所要所では簡単なアニメーションも挿入された。その他、文章に同期するかたちでBGMや効果音が鳴り、臨場感を盛り上げる演出が随所に盛り込まれていた。
主人公は大学生の男(名前は自由に設定できる)。恋人の「奈美(変更可能)」と人里離れた高原へデートに来ていた。その帰り道、突然車が故障し、修理不能となってしまう。途方に暮れた2人は人家を求めてさまよい歩くうちに、古い洋館を見つける。二人が洋館に入ると、そこでは奇怪な出来事が次々と起こり、ついには恋人の奈美が幼い頃その洋館で暮らしていたという事実と、彼女の実の家族がたどった奇妙な運命が明らかになるというストーリーになっている。

主人公と恋人の他に、洋館のキャストとして、女のミイラ、怪魚、鎧、若い女の幽霊などが登場。洋館という舞台とそれらのキャストを使って、ミステリー、ホラー、コメディ、ファンタジーなど様々な物語が繰り広げられる。
例えば、同じ怪魚ひとつをとっても、ある話では単なる魚として登場し、別の話では恋人の弟として登場するなど、その使われ方はストーリーによって様々に変わる。プレイするたびに選択肢が増えてゆくシステムや、全てのエンディングを見ると隠しシナリオに進める構成など、その後、追随してきた同タイプのゲームの基礎を作った。
そればかりか、このゲームを超えるノンリニア・テキストアドベンチャーゲームはいまだに現れていないという見方もある。この「弟切草」以外のテキストアドベンチャーのシナリオが、例外なく単純なツリー構造になっているのに対し、「弟切草」は複雑なフラグ管理によって、もっと柔軟な分岐構造を実現していたからである。


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