ウィリアム・バロウズの「カットアップ」

『裸のランチ』などで知られるアメリカの作家ウィリアム・バロウズは、あるまとまった文章を一旦バラバラにしたあと、ランダムにつなぎ合わせるという“カットアップ”の実験を1950年代から60年代にかけて行い、創作に応用した。言葉に新たな関係性を獲得させ、そこから創作上の素材や、ときには未来についての予言(だと後から解釈できるような奇妙で曖昧な文章)が生み出されるのを発見したのである。
ひとつの言葉は、それが置かれる文脈によって様々に意味を変える。バロウズは言葉をランダムに並び替えることによって、その特性を最大限に拡張し、連想のリンクを爆発的に広げ、通常では考えられないような奇妙で幻覚的なイメージを数多く生み出すことに成功した。
もともとこの方法は、映画におけるモンタージュの技法からヒントを得て始められたものであった。それゆえ、コンピューターによるノンリニア編集という技術を使い、このカットアップと良く似た方法で映画「WAX」が作られたことは、それほど驚くには値しないのかも知れない。


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