【ポリゴンコラム】

大予測! 64DD用ソフト「クリエイター」


NINTENDO64DD用ソフトのラインナップに「クリエイター」というソフトがある。
当初、このソフトの画面として公開された写真には、恐竜の姿が写っていた。
それを見て、私は単純に、これは恐竜を育てるゲームだろうと考えていた。
しかし、後の発表によると、これはモデリングソフトだというのである。

これは一体どういうことなのか?

恐竜の画面写真…
「クリエイター」というタイトル…
モデリングツール…

この3つの手がかりをつなぐ糸は1つしかない!

このソフトは「進化モデリングツール」なのだ!

数年前から脚光を浴びるようになったコンピューターサイエンス関連の研究分野に「人工生命(Artificial Life)」というものがある。これは、生物の進化のメカニズムをコンピューターでシミュレーションし、生物学や生態学の理論的研究に役立てたり、生物進化のメカニズムの工学的応用を研究したりする学問分野である。
この分野の代表的研究の1つに、「利己的な遺伝子」の著者、リチャード・ドーキンスが作った「バイオモルフ」というシミュレーションプログラムがある。これは簡単に言えば、いくつかのパラメーターによって様々な図形を描くプログラムである。パラメーターが初期状態のときには、木の枝のような図形が表示される。そして、パラメーターにランダム要素を加えた、いくつかの“変種”も一緒に表示される。ユーザーはこの中から好きな変種を選ぶと、再びその変種がいくつか表示され、その中からまた好きな変種を選び……。ということを続けていくうちに、思いもよらない多種多様な絵が現れてくるのである。最初は、枝の生え方が少しづつ違う木のような図形ばかりだが、何代にも渡って変種の選択を繰り返していくと、クモのような生物の絵やハエのような生物の絵になっていく。この“パラメーター”は、いわば遺伝子に当たるものである。ドーキンスはこれによって、生物のような複雑で合目的的な存在が、無から生じるわけがないという俗説を退け、自然選択の積み重ねによって無から驚くほど複雑で多様な存在が生じうることを分かりやすく説明しようとしたのである。

「クリエイター」はおそらくこの原理を利用したモデリングツールなのではないか。
最初は基本的な爬虫類のモデルがあり、その変種を選択していくことによって、様々なモデルを作っていくというものである。
テクスチャーもこの原理でどんどん変化させることができる。

これにより、3Dの知識がないユーザーでも手軽にいろいろな生き物のモデルが作れ、しかもモデルを作るだけではなく、自分専用の庭に放して観察して楽しむといったことができるようになる。さらに、放しておいた生物が勝手に交配し、いつの間にか両方の生き物の遺伝子を混ぜ合わせたような生き物が生まれていたりしたら面白いだろう。

やるな、任天堂……(もう決め付けてる)。


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